第9回 著作権侵害の非親告罪化って何?


著作権最前線 ~クリエイターが知っておきたい“それなり”の話

第9回 著作権侵害の非親告罪化って何?

講師:那住史郎 (これまでの記事)

 皆さんは「コミケ」に行ったことがありますか? 毎年お盆の時期と年末、東京ビッグサイトで行われる漫画の同人誌即売会には、大変多くの人が訪れ、イベントの度にニュースになっていますね。私も一度行ってみたいなぁと思っているのですが、報道で見るあの混雑具合を見ると、なかなかあの中に入って行こうという勇気が沸かず、今日まで一度も行ったことがありません。

 さてそのコミケなど、アニメや漫画の同人誌即売会に参加している人たちの間で、今夏話題に上がっていたのが「TPPに関連する著作権法の改正で、著作権侵害の<非親告罪>化が行われ、コミケに影響が出るかも!」という話題です。
7月25日付けの毎日新聞には「TPP:著作権、非親告罪化 社会や文化の萎縮懸念」(http://mainichi.jp/select/news/20150726k0000m020081000c.html)と言った記事も掲載されています。

 この問題、アニメや漫画の世界だけでなく、イラストーションや音楽など、全ての創作活動に関わってくる問題です。

 日本では現在、万が一著作権侵害をしてしまった場合の刑事罰について、原則「親告罪」という制度が導入されています。これは「著作権者」が「自分の著作権が侵害された」と告訴しない限り、侵害をした者に対し刑事責任を問うことが出来ないという制度です。
これに対し「“非”親告罪」とは、著作権者からの告訴が無くても、侵害を行ったものに対し、刑事責任を問えるようになる制度です。

 例えばコミケなどに出展されている同人誌の多くは、オリジナルの作品に対する二次創作です。こうした二次創作の中には著作権侵害が疑われる作品も存在します。これまでは著作権者がこうした「疑われる作品」について、著作権侵害を問題視しなければ、罪に問われることはありませんでした。しかし「非親告罪」が導入されれば、例えば第三者からの「告発」や、警察官等の捜査等により、著作権者の告訴がなくても罪を問うことが出来るようになります。
イラストやデザインでも同じです。元のイラスト等の作者が、著作権侵害を問題視しなかった場合でも、罪に問われる可能性が出てきます。

 ではなぜこのような話が出てきているのでしょうか。それは「TPP」でそんな話が話し合われているからです。

 TPP=環太平洋パートナーシップ協定は、ざっというと、太平洋を囲む国々の中で、商売や取引などについて統一したルールを作りましょう! と、いうルール作りに関する交渉です。
この交渉の中で著作権を巡るルールについても話し合われています。
現在参加している10カ国のうち、著作権侵害について親告罪を導入しているのは、日本とベトナムの2カ国のみ。特にアメリカなどから自国の映画産業に対する海賊版等の被害に対処するため、強く非親告罪でのルール統一が求められているようです。

 現在、TPP交渉自体が報道によるといろいろ迷走していますので、実際のところ今後どうなるのかはわかりません。しかしコミケなどで騒がれていた、非親告罪化の導入により、日本の特徴的な二次創作文化やパロディー文化が萎縮してしまうのではないかという懸念は、確かにその通りではないかと思います。
一方でデザイン等の作成において、安易なパロディーや転用・類似が減っていけば、ロゴやデザインを巡る、似ている似ていないといった問題は減少していくのではないかなぁとも思います。

 今後、この問題についてどのような方向性が示されていくのか。本欄でも注目していきたいと思います。

★ 本日の結論→「非親告罪化の動きにこれかも注目」

行政書士 那住史郎

<ブログのプロフィール>
那住史郎(なずみ・しろう) 行政書士。神奈川県行政書士会所属、那住行政書士事務所代表。法政大学文学部日本文学科卒業。2002年より民間著作権エージェントにおいて著作権業務、作家・クリエイターの支援業務に携わる。現在は、著作権関連の業務を中心に、作家・クリエイターの創作活動を法務的側面から支援する「作家の法務パートナー」として活動している。
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