著作権最前線 ~クリエイターが知っておきたい“それなり”の話

第4回 クリエイターが気をつけたい
契約書の注意点・後編

講師:那住史郎 (これまでの記事)

 明けましておめでとうございます。って、気がついたら年が明けてだいぶ時間が経ってしまいました。そして前回の更新からもかなり間が空いてしまいました。
本サイトの管理者、ラフストーンさんによると、当連載に多くのアクセスを頂いているとのこと。ありがたいですね。皆さんのご期待に答えるためにも、今後は10日おき(ぐらい)に更新していきたいと思います。ご期待ください。

 前回、「契約書はきちんとした契約書を作りましょう」というお話をしました。では、具体的にどういった点に気をつけたらよいのでしょうか? これは非常に難しい問題です。と、言うのも作品のジャンルや、出来上がる成果物、また個々の契約の事情によって注意すべき点は異なります。そこで今回は、「皆さんの何らかの作品が、ある出版社から本として出版される」そんな状況を想定して、どのような契約書であっても、まずはこういう点を注意したらいいのではないかというポイントを、3つほど挙げたいと思います。

「出版契約を結ぶ!」という時、多くの場合、出版社の方から契約書が提示されると思います。クリエイター側で「契約書を作りましたのでコレでお願いします」という人は、まずいないでしょう。大前提として、クリエイターの皆さんに知っておいて欲しいことは、「契約書は作った側に有利なるように作られている」ということです。当たり前と言えば当たり前です。わざわざ契約書を作るのに、自分が不利になる契約書、自分の手間がかかるような契約書を作る人はいません。こうした観点から考えると、以下のポイントはいずれも、場合によってはクリエイターに不利な状況を作ってしまうことがあります。

 1)自動更新条項
 第●条(契約の自動更新) この契約は、期間満了の3ヵ月前までに甲乙いずれかから文書をもって終了する旨の通告がないときは、この契約と同一条件で自動的に更新され、有効期間を▲ヵ年ずつ延長する。

 出版契約に限らず、たいていの契約書に入っている条項です。何らかの事情で、契約の更新を希望しない時、また内容を変更したいと思う場合は、更新拒絶の手続きを取らなくてはなりません。皆さん、携帯電話の契約の更新月って覚えています? アレけっこう忘れちゃいますよね。いざ携帯電話を替えたいと思ってもうっかり更新月が過ぎてしまい、解約金が発生してしまう。そんな経験ありませんか。そうですアレと同じです。「期間満了の3ヶ月前」と言われてもついつい忘れてしまいます。
そこで例えばこのような条項が入っていた場合、更新前に出版社から更新の意思を確認する通知がくるようにするなど、文言を加えれば、ついうっかり期限が過ぎてしまったということはなくなります。

 2)二次使用条項
 第 ● 条(二次的使用)この契約の有効期間中に、本著作物が翻訳・ダイジェスト等、演劇・映画・放送・録音・録画・電子媒体・貸与等、その他二次的に使用される場合、甲はその使用に関する処理を乙に委任し、乙は具体的条件について甲と協議のうえ決定する。

 自分の作品について最近は、クリエイター自身が様々なブランディングをするケースも多く見受けられます。自分の作品は、自分の手で舵をとっていきたいと考えても、契約書にこのような文言があった場合、契約の相手方の手によって、勝手に利用されてしまう場合があります。さらには自身での利用も制限される場合が出てくることもあります。作品を相手方にすべて委ねようとする場合以外は、文言に注意が必要です。

 3)印税率のマジック
 著作物使用料 ●%

 3つ目は一番大事なお金の部分について。「印税」とか「著作物使用料」だとか、契約によって支払われる対価について、具体的な金額ではなく、「%」で表記されている場合があります。この数字が思いがけず、大きな数字が書かれていたとしても注意が必要です。
 そのパーセンテージの「分母」は何か?
 商品の定価なのか? あるいは他の数字なのか? 電子書籍の出版契約書では、通常の紙の本より大きな数字が書いてあるがよくみたら「出版社が受け取った金額の●%」だったという例が見られます。いざ振り込まれた金額を見たら、アレ? ってことになってしまうかもしれません。

  今回は3つほどですが注意点を具体的に挙げてみました。次回、「契約書の注意点」についてのまとめを少しお話した後、次のテーマ「クリエイターが気をつけたい、著作権法上の注意点」について書いていきたいと思います。

 それでは皆さん、約10日後にお会いしましょう。

★ 本日の結論→「「契約書は作った側に有利なるように作られている」

行政書士 那住史郎

<ブログのプロフィール>
那住史郎(なずみ・しろう) 行政書士。神奈川県行政書士会所属、那住行政書士事務所代表。法政大学文学部日本文学科卒業。2002年より民間著作権エージェントにおいて著作権業務、作家・クリエイターの支援業務に携わる。現在は、著作権関連の業務を中心に、作家・クリエイターの創作活動を法務的側面から支援する「作家の法務パートナー」として活動している。
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