第6回 クリエイターが気をつけたい、
著作権法上の注意点②
講師:那住史郎 (これまでの記事)
花粉スゴイですね。今年は昨年の4~5倍花粉が飛んでいるそうです。私の事務所のある横浜市市ヶ尾も、かなり花粉が飛んでいて、今日も目をこすりながら、この原稿を書いています。
さてクリエイターの権利を守る著作権。しかし気をつけないと思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあります。そんな「気をつけたい注意点」をいくつかご紹介していきます。
クリエイターのみなさんが創作する作品は、当然「著作権」で保護されています。「あなたの作品」が「著作権」で保護されているということは、当然「他の誰か」が作った作品も「著作権」で保護されています。
例えば次のような場合を考えてみましょう。
1)「写真」作品の中に意図的に生存している著名画家の絵画作品を写りこませる。
2)「音楽」を作曲する際に、生存している別の作家が作曲したメロディーを一部挿入する。
3)「本の表紙」をデザインするにあたり、生存する別の作家が作ったオブジェを模倣してオブジェを製作し、表紙の一部に掲載する。
上記の例、創作された「写真」「音楽」「本の表紙」。いずれもそれぞれ創作されたクリエイターの方の「著作物」であることは間違いありません。しかしそれぞれ、その「著作物」の中に含まれている「他のクリエイター」が創作した「絵画」「音楽」「オブジェ」も、それぞれ「著作物」であり、他のクリエイターの著作権が存在します。
つまり上記のいずれの例も、他のクリエイターから、著作物を利用する「許諾」を得ない限り、著作権侵害をしてしまう可能性があります。
いやでも「写真作品を作るのに、絵画を取り入れたのは、あくまでその写真作品を作るための構図の一部として<引用>しただけ。だから許諾は必要ないのでは」と思った方もいるのでは。
確かに著作権法第32条1項には次のように書かれています。
例えば論文などを書くにあたり、必要最低限の他人の論文を、自らの文章と、他人の文章とを明確にして、自らの文章が「主」になるように自分の論文の中に書き加えることは、この条文に書かれている「公正な慣行に合致」するものであり、「目的上正当な範囲」と言えることでしょう。
しかしながら上記に挙げた1)~3)のような場合、どこまで「目的上正当な範囲」と言えるのか、その線引きはあいまいです。
せっかく創作した作品を、争いの渦中に巻き込まないためにも、事前にきちんと許諾を取って利用することは、不可欠なことなのです。
★ 本日の結論→「他人の著作物を利用する際は、ちゃんと<許諾>を取ろう」
行政書士 那住史郎
那住史郎(なずみ・しろう) 行政書士。神奈川県行政書士会所属、那住行政書士事務所代表。法政大学文学部日本文学科卒業。2002年より民間著作権エージェントにおいて著作権業務、作家・クリエイターの支援業務に携わる。現在は、著作権関連の業務を中心に、作家・クリエイターの創作活動を法務的側面から支援する「作家の法務パートナー」として活動している。
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