第5回 クリエイターが気をつけたい、
著作権法上の注意点①
講師:那住史郎 (これまでの記事)
暦の上では春となりましたが、まだ寒い日が続いています。雪の多い地域からは雪害のニュースも伝わってきますが、皆さんのお住まいの地域はいかがでしょうか。
さて今回はまず、年をまたいでお届けしました「契約書の注意点」に関するまとめからです。
前回、出版契約を例にとり3つほどですが注意点を具体的に挙げてみました。
ここで誤解の無いように申し上げたいのですが、出版社等のクライアントが作ってくれた契約書にそのままサインをするのはダメだ……と言っているわけでは無いということです。
当然のことながら、ある程度大きな出版社等であれば、契約書は専門家が作った、ちゃんとした体裁で送られてきます。クリエイターの権利を守るための条項もきちんと入っていることでしょう。
理解していただきたいのは、送られてきた契約書は、絶対この契約書でサインをしなくてはいけない、という物ではないということです。
中身を精査し、疑問点があったり、変えて欲しい点があったら、クリエイター側から、文言の変更を申し出ても良いのです。
契約のルールを定めた民法の基本原則の一つに「契約自由の原則」があります。<契約をするかしないか><誰と契約するか><契約内容をどうするか><どのような方式にするか><契約の変更・解消>といったことは、当事者間、つまり双方の「自由な」取り決めによって決められるべきということです。そうです「双方」です。クリエイター側としては提示された契約書に、そのままサインして判子を押してしまうことが、実際は多いかもしれませんが、必要があれば、クリエイター側から申し出て内容を変更してもらうことも大切なことなのです。
さて、話は変わりまして……突然ですがここでクイズです。
存命中の有名な画家が書いた絵画を模写。その模写した絵をTシャツにして販売しました。私が書いたものなので販売しても良い。
○か×か
答えは後ほど。
著作権は皆さんが精魂込めて製作された作品を「守る」ものであると、本連載の第1回で申し上げました。自分の作品が著作権によって守られているのであれば、当然のことながら他人の作品も著作権によって守られています。
ということは何か創作活動をする際には、他人の著作権を侵害しないように気をつけなくてはいけません。
創作活動をする際に、著作権について良く理解していなかったために、ひょっとしたら問題が起きてしますかもしれない……そんな注意点をいくつかご紹介していきます。
それでは先ほどのクイズの答えです。
答えは「×」
問題の事例は複製権(著作権法第21条)、翻案権(同第27条)、同一性保持権(同第20条1項)の侵害になると考えられます。著作権侵害には10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその両方に処される場合があります。
詳しくは次回。
★ 本日の結論→「契約には<契約自由の原則>がある。」
行政書士 那住史郎
那住史郎(なずみ・しろう) 行政書士。神奈川県行政書士会所属、那住行政書士事務所代表。法政大学文学部日本文学科卒業。2002年より民間著作権エージェントにおいて著作権業務、作家・クリエイターの支援業務に携わる。現在は、著作権関連の業務を中心に、作家・クリエイターの創作活動を法務的側面から支援する「作家の法務パートナー」として活動している。
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