著作権最前線 ~クリエイターが知っておきたい“それなり”の話

第8回 ギャラリーの
BGM利用は著作権者の許諾が必要

講師:那住史郎 (これまでの記事)

 先日、このようなニュースが新聞等でとりあげられていました。

 無断でBGMダメ! JASRAC法的措置に店は困惑
http://www.asahi.com/articles/ASH695JY3H69UCLV00H.html

 飲食店や美容室、アパレル店など171事業者、258施設に対して、JASRAC(日本音楽著作権協会)の定めるBGM使用料を支払う手続きを行わず、音楽の無断利用があったとして、JASRACが全国の簡易裁判所に民事調停を申し立てたというニュースです。

 作家の皆さんが展示会を開催する時、ギャラリー内でBGMを流したりすることもあると思います。果たしてこのような音楽の利用についても、著作権者の許諾が必要なのでしょうか。

 結論から申し上げると許諾申請が必要となります。

 著作権法には以下のような条文が定められています。

 著作権法
第二十二条  著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

 「著作者」は「専有する」とありますので、「公衆に」著作物を提供することを、許諾するかしないかという権利は「著作者」のみが持っているということになります。この条文には「直接見せ又は聞かせ」とありますが、「上演し又は演奏する権利」については第2条第
7項で「……録音され、又は録画されたものを再生すること……を含む……」とありますので、録音されたものを再生することも含まれます。
 つまり録音された音楽を多くの人に聞かせることを目的として、再生する場合には、著作権者の許諾が必要となるわけです。

 JASRACは多くの音楽著作権者から、著作権の管理を任せられています。そこで市販のCDや、携帯音楽プレーヤーにダウンロードした音楽、またインターネットラジオを音源として、ギャラリー等にBGMを流す場合は、JASRACへの利用申請が必要となるわけです。
 ギャラリーなどがBGMの利用申請を行う場合は、店舗面積に応じて年間6,000円~の使用料を支払うこととなります。このような手続きを行っているギャラリーで音楽を利用する際は、作家側が別途手続きを行う必要はありません。
 一方、前記のような手続きを行っていないギャラリーで、音楽を利用する場合は、作家側が個別に許諾申請を行う必要があります。

音楽も一つ一つが大切な著作物。ちゃんとした手続きをとった上で利用することが大切です。

★ 本日の結論→「BGMとしての利用は著作権者の許諾が必要」

行政書士 那住史郎

<ブログのプロフィール>
那住史郎(なずみ・しろう) 行政書士。神奈川県行政書士会所属、那住行政書士事務所代表。法政大学文学部日本文学科卒業。2002年より民間著作権エージェントにおいて著作権業務、作家・クリエイターの支援業務に携わる。現在は、著作権関連の業務を中心に、作家・クリエイターの創作活動を法務的側面から支援する「作家の法務パートナー」として活動している。
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